WTO設立に伴い、GATT体制の理念を受け継ぎ、紛争解決の仕組みなどを強化している体制。
◆WTOの紛争解決手続の流れ
根拠法:附属書2「紛争解決に係る規則及び手続に関する了解(DSU :Dispute Settlement Understanding)」
? 二国間協議 :パネル設置の前にDSUに基く二国間協議を経なければならない。協議の要請を受けた加盟国は、10日以内に回答し、30日以内に協議を開始しなければならない。
? パネルの設置 :二国間協議の要請から60日を経過しても紛争が解決しない場合、申立国は「紛争解決機関(DSB)」にパネル設置を要請することが出来る。パネルの設置は、全加盟国が反対しない限り採択される(ネガティヴ・コンセンサス方式)。
? パネルの審理 :パネルが設置されると3名のパネリストが選ばれ、2回の審理が行われる。6ヶ月以内に報告書を作成し、WTO協定違反か否かを判断する。
? 上級委員会への上訴 :パネル報告書は加盟国に配布され、紛争当事国は報告に不服がある場合は上級委員会に上訴することが出来る。上級委員会は原則60日以内、複雑な問題であれば90日以内に報告書を作成する。
? 報告書の採択 :パネル最終報告書は60日以内、上級委員会報告書は30日以内に、「紛争解決機関(DSB)」において採択される(ネガティヴ・コンセンサス方式)。委員会でWTO違反と認定された報告をDSBが採択した場合、被提訴国に是正勧告がなされ、WTO協定違反の措置を廃止・是正する法的な義務を負う。DSB勧告に従う早急な是正措置が出来ない事情がある場合は、妥当な期間が与えられる。
? 履行確認パネル :履行措置がとられたか、またはとられた措置が対象協定と整合的かどうかについて争いがある場合、履行確認パネルか上級委員会手続によって解決される。
? 対抗措置の承認 :期限までにDSB勧告が履行されない場合、被提訴国に代償を求める。その合意が得られない場合はDSBに対抗措置を求めることが出来る。対抗措置はDSBの承認を得ることによって講じることが許される。対抗措置には関税譲許の停止(=報復関税)やその他の協定上の義務の停止などがある。