民主主義という語を、いつどこで覚えたのだったろうか。 小学五年六年時の担任教諭は、いかにも戦前の女子師範の節度謹厳を思わせる怖いオバチャン先生だった。私は自分の出来には余る教師運に恵まれた男と思っているが、まず最初がこの先生だ。あれこれの場面を今思い返しても、尊敬の念が湧く。四民平等も基本的人権も、この先生から伺ったのが最初だったにちがいない。なにしおう今では甲論乙駁半ばする「戦後民主主義教育」のまっただなかだった。 巡り合せでつい入学してしまった私立中学は、文部省(当時)学習指導要領なんぞは大胆に踏み破って平気な、独自カリキュラムの学校だった。社会科科目には「日本史」「世界史」「地理」のほか…