・黒井千次『禁域』(2) 昨日の続きで、「花鋏を持つ子供」の設定を確認して置こう。 7~15頁「一」の冒頭部(7頁2行め~8頁11行め)が場所の説明になっている。長くなるので7頁5行め~8頁4行めを抜いて置こう。 省線の駅から大通りを来て左へ折れるその道は、両側の地面の高さの異った変化のある道だ/った。大通りに面した酒屋と文房具屋は同じ地平に並んでいるのだから、折れた道を北に進む/につれて右手の土地だけが次第にせり上って来ることになる。右側の家は、はじめ目につかな/いほどの高さの石やコンクリートの上に塀を連ねているのだが、いつの間にかその土台の丈が/増して大谷石の石垣が現われ、明史*1の家の前…