時間の中での出来事というと、ひとつに因果関係がある。しかし私は因果関係というのがどうも胡散臭くて仕方ない。ニーチェもどこかで「なぜ、原因と結果に分けて考えたがるのか。原因-結果はひとまとまりの出来事である」という意味のことを書いていた。 人間は大きな連鎖の中から、自分の理屈で把握できるものを都合よく抜き出して、因果関係という方便を作っているだけなのではないか。 小説のストーリーは因果関係によって作られる。ある犯罪や事故が起きたときも、因果関係が問題にされる。しかし、同じ境遇に育った人間の中で、実際にその犯罪を起こすのはその人ひとりだけだ。現実の行動とそれ以前の過去や状況との間にはその人だけが飛…