俳句結社「河」の編集長を3年務めた後、2010年に俳人として独立。 創作の傍ら、ビジネスマンを対象とした句会の開催、江東区の各小学校で俳句の授業を行うなど、 老若男女幅広い層へ俳句の豊かさや楽しさを伝えることをテーマに活動中。 千野帽子氏、長嶋有氏、米光一成氏らとともに世界初となる句会ライブイベント「東京マッハ」に参加。
2011年に俳句総合誌「俳句界」が設立した第2回北斗賞を受賞。 2013年に句集『熊野曼陀羅』で第36回俳人協会新人賞受賞。
※堀本裕樹 公式サイト プロフィールより
「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 忖度をし合ひ差しあふ冷酒かな (堀本裕樹) 出題者はジャーナリストの方で、堀本裕樹のエッセイによると、森友学園の問題で「忖度」という言葉が注目された後に出されたお題だそうです。それまで「忖度」というのはあまり日常語ではなかったのですが、俳句の世界では、「おもんばかる」というどちらかというとポジティブな意味合いでよく使われていた言葉なのだとか。 僕は善心的な文脈で使っていたから、この問題で「忖度」という言葉が汚されたように思えてちょっと悲しい。たとえば、句会の選評なんかで、「この句のなかであえて省略さ…
「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 花桐や夕ごころとはうらはらの (堀本裕樹) 最初、「花桐」と「夕ごころ」のどこが「うらはら」なのかよく分からずに読みました。エッセイには二首の俳句を引用しながら、岐阜をドライブした思い出が語られます。 桐の花が現れるたびに、僕は眩しく目を凝らした。落葉高木の桐は気品に充ちた樹形をしており、筒形のその紫の花はどこかしら憧れのような気持を抱かせるのだった。 俳句では「花桐」とも呼ばれて詠まれるが、夕暮れになって心がどことなく沈鬱としてくるなかでも、桐の木は揺るぎを見せない。姿勢を正したまま夕日にその紫を…
「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 蝶生れて瀬戸内海の綺羅となる (堀本裕樹) 綺麗な句だな、と思いました。エッセイでは瀬戸内海での思い出が書かれており、瀬戸内海のイメージが美しいものだから美しい句が生まれたんですね。最後に、 この辺りで生まれるすべての生き物は、まもなく瀬戸内海のきらきらした風に吹かれるのだろう。蝶も生まれると、やがて瀬戸内海の風に乗って光にまぎれ青やかに舞い上がるのだろう。 とあり、その光景が目に浮かぶようでした。 瀬戸内海へは、大学の非常勤講師として通っていたことがあるそうです。三十代の頃、学生の句会に参加したり…
「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 鳥交る天のふるえてゐたりけり (堀本裕樹) この俳句はとても言葉が美しいし、それに先人の句も踏まえた作りになっているそうで、興味深く読みました。 そのことも真空のなかや鳥交る (森澄雄) という俳句があるそうです。空で交わる鳥のつがいの様子を描いており、それを尊いものとして見上げる詠嘆の句だとか。堀本裕樹の句は、鳥が交わる天の方が光り輝きながら歓喜にふるえる、という作りになっています。 「鳥交る」という季語は初めて知りました。「猫の恋」は知っていたのですが。これらの季語について、エッセイで (前略)…
「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 鎌風の抜け道のある安普請 (堀本裕樹) 「安普請」という言葉から私がとっさに連想したのは「若さ」というか、もっと平たく言えば「貧乏学生」でした。穂村弘はそういう感じのテーマで歌を詠んでいて、エッセイに当時の2歳上の恋人について書いているのですが、 壜入りのマヨネーズ、グリーンアスパラ、ネクタイの結び方など、初めてのものやことをいろいろ教えられた。 という一文が一番ひっかかりました。 「グリーンアスパラ」??「ホワイトアスパラ」だったら分かるけど、「初めてのものを教えられた」という文脈で「グリーンアス…
「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 蟷螂の鋭き眼に腹を見抜かるる (堀本裕樹) 蟷螂、という単語から、「交尾の後雌が雄を食い殺す」というよく知られた(実はそれほど高い確率ではない)習性について言及され、この蟷螂も「魔性の雌かもしれない」と締めくくられます。エッセイにあるように擬人化としてとらえると、「魔性の女の人に全て見透かされたい(そして交尾の後食われたい)」という感じなのかな。 題は「腹」なので、この時「見抜かれた」のはどんな「腹」なんだろうと思います。どんなまなざしで蟷螂を見ていて、そして鋭く見返されたのだろうか。「腹を見抜かる…
「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 濡れ衣を着せられしまま秋の蜘蛛 (堀本裕樹) この句のエッセイはかなり気持ち悪いです…。気になる方はぜひ本でどうぞ。ちょっとここに転載するのが躊躇われるレベルというか…。でも、句はいいなと思いました。エッセイの最後にこうあります。 東京のアパートでは、ときどき小さなハエトリグモを見かける。ちょこちょこ歩いているだけなので可愛いものだ。けれども、蜘蛛というのは、どこか無実の罪を背負わされているような暗い気配を引きずっている。秋になると、ことにその暗影が増すようだ。 蜘蛛、確かにちょっと「罪」の匂いしま…
「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 切り口の楕円うつくし胡瓜漬け (堀本裕樹) この句はまさに正統派俳句、という感じで(よく知らないのでイメージですが…)心惹かれました。夏、胡瓜、切り口の楕円、ですね。 最近バラエティ番組『プレバト』の俳句のコーナーを見ていて(しつこいようですがこの記事2022年に書いたので…)、「炎帝戦2022」だったかなあ、俳句がうまい15人で優勝を競う!みたいな感じだったのですが、お題は「メール」でした。で、上位に入った作品は破調が多く、また「メール」という言葉が詠みこまれていない句も多くて、「メールという言葉…
「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 瓜番として適性を見るといふ (堀本裕樹) これ、「適性」というお題がいいためか短歌も俳句も面白くて、特に俳句とそれにまつわるエッセイが面白かったので俳句を引用してみました。エッセイ全部面白いのですが、どこを引用すればうまく伝わるのか分からず何度か読み返しながら悩みました。 まず、「季語は増え続けているのか」と聞かれることがある、というエピソードから始まります。確かに新しい概念が導入されれば季語は増えるはずで、以前調べて面白いなと思ったのは、明治時代に西洋から草花を輸入して外来種が定着するとその草花に…
「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 胡瓜など蒔きしと部長話し出す (堀本裕樹) 「部長」という言葉で提出された作品が、堀本裕樹と穂村弘で全然違っていて面白かったです。堀本裕樹の俳句の方は牧歌的な感じで、穂村弘の短歌の部長はちょっとヤバい人です。この違い、二人の発想の違いもあるのかもしれませんが、やっぱり「季語」縛りもあるのかな、って感じました。題の「部長」を入れて、季語を落さず十七字で、ってなると、ヤバい人よりは風流な人になるのかなあ、と。 エッセイでは本人の正社員時代のエピソードが語られますが、この「部長」は実在の人ではないようです…
「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 喰らひ合ふ夜食共謀罪めけり (堀本裕樹) エッセイの冒頭に「夜食は秋の季語である」旨が説明されます。もともと夜食というのは、秋の収穫時期に夜遅くまで働く農家の人たちが摂るものだったのだそうです。この句は「喰らひ合ふ」なので複数人でいることが示唆されていて、そこで「夜食」というのはちょっと罪悪感というか、「ほんとはダメだけど、今日は特別ね」みたいな「共謀罪」かなって思います。 昔、父が夜に飲みに行くと、帰りに寿司折とかミスタードーナツの詰め合わせを買って帰ってくれることがありました。なんか昭和の漫画み…
「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 妹の寝顔の上の蟻を吹くおいてけぼりのアリスの姉は (穂村弘) 「注意書き」に、 今回、先にお題を見て自分でも歌を作ってから本を読んでみました。穂村弘、堀本裕樹の発想の面白さ、着眼点の鋭さがより実感できると思いますので、みなさまもぜひやってみてください。 とか書いたのですが、歌を作ってから穂村弘の歌を読んで、「あー、テーマがかぶっちゃったし、穂村弘の歌の方が断然いいな」って思いました。まあ、それ自体は当たり前なんですけど、今までテーマがかぶったと思ったことがなかったので。 「おいてけぼり」で、やっぱり…
(ほんどうに チェロおかれある しゅうきかな) 『蒼海』22号 堀本裕樹主宰 選 市内のお寺でクラシックコンサートが開催されたことがありました。秋の紅葉の時分で夜のお庭がライトアップされて。 22号は8句掲載。満足です。来週初めには23号が到着予定なので焦ってアップしました。
(さんぷくや とりいのこれる はいぎょこう) 『蒼海』22号 堀本裕樹主宰 選 散歩中にみつけた漁港近くの小さな神社からの創作句。寂れたひなびた港ですが健在で、廃漁港は言い過ぎです(汗)
(ひょうかうる よるのとうきょうタワー せに) 『蒼海』22号 堀本裕樹主宰 選 東京スカイツリーのライティングがアイスキャンディーのような色合いだったのを見て。音数の都合で東京タワーに変えました。
(ゆうかぜに きせいのあにの ねまりおり) 『蒼海』22号 堀本裕樹主宰 選 コロナ禍の規制が緩和されたGW明けに「久しぶりにお袋の顔を見たい」と兄が帰ってきました。普段は都会暮らしの兄。夕方、気持ちよさそうに昼寝をしておりました。
(あめのひの ほたるぶくろの がらすめく) 『蒼海』22号 堀本裕樹主宰 選 雨に濡れた植物を詠みたくて。
(すりがらすに やもりこぬよの つづきおり) 『蒼海』22号 堀本裕樹主宰 選 窓硝子を這う守宮を見ながら夕飯の食器を洗うことが多いのですが、姿を見せない夜は「どうしたのかな」と心配になります。
(はつなつの みさきおおきく まわるバス) 『蒼海』22号 堀本裕樹主宰 選 近所の小さな漁港の手前がバスの終着地。
(わかばかぜ さっきとちがう がらのねこ) 『蒼海』22号 堀本裕樹主宰 選 近所に野良猫がどんどん増えて困っています。餌をやっている方がおられるようです。自分も猫好きなので黙認しておりますが...。