翻訳家。(1951-1993) ウィリアム・ギブスン作『ニューロマンサー』の、ルビを多用した特徴的な翻訳でSFファンに鮮烈な印象を与えた。「電脳空間」は彼の造語。
主な翻訳に、ルーディ・ラッカー、ジャック・ウォマック、ロジャー・ゼラズニイ、K・W・ジーター、R・A・マカヴォイ、ダグラス・クープランド、マーク・ジェイコブスン、ヴァーナー・ヴィンジなど。
肉だ、と心の一部が言っている。肉の言い分だ。無視しちまえ、と。 (ウィリアム・ギブスン,黒丸尚訳,『ニューロマンサー』,早川書房,1986年,289頁) 『ニューロマンサー』の肉体性について語ってみる。 脳-身体という野卑な二元論を『ニューロマンサー』へそのまま応用すると、ギブスンは「電脳空間」に代表される「脳」について語りながら、その実、「膚板」「リンダとの関係」に代表される「身体」について語っていることが分かる。それこそ伊藤計劃は、ギブスンの流行に絆されない冷静を「ガーンズバック連続体」でもって評価したわけだが、『ニューロマンサー』にもまた同じ評価を当てはめることができるだろう。つまり、脳…
「果しなき流れの果に」小松左京 新装版 果しなき流れの果に (ハルキ文庫) 作者:小松左京 角川春樹事務所 Amazon ある古墳から「無限に砂が落ち続ける砂時計」が発掘された。しかもその砂時計が埋まっていたのは中生代の地層だった。この砂時計を手にした考古学者らは、宇宙の始まりから終わりまでの時間スケールでの戦いに巻き込まれていく…というお話。 傑作だった。これもテーマ的には「地球幼年期の終わり」「最終人類」などと同じ、人類と高次の存在が出てくる話でもあるが、超長い時間をタイムトラベルを繰り返しながら戦う、という点であまり似たストーリーを思いつかなかった。強いて言えば最近見た上田誠脚本のドラマ…
ウィリアム・ギブスン黒丸尚訳「ニューロマンサー」読了。全編サイバーパンクである。そしてそれ以前に優れたハード・ボイルド小説である。しかし、読み進めるうちに思っていたのは「映像なら一瞬で済む描写」を文章で描写すること」の難しさである。 もちろんイリュージョンのような舞台や小道具は素晴らしいがこの作品がなければ「マトリックス」も「JM」も「攻殻機動隊」でさえ存在できなかったかもしれない。#白猫Bookreview NEUROMANCER
「港の空の色は、空きチャンネルに合わせたTVの色だった」 サイバーパンクと呼ばれるジャンルフィクションの始点の一つ、ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』、黒丸尚氏の訳による有名な冒頭の一文である。 本作は日本「チバ・シティ」から物語が始まる。この冒頭の「空」はチバ・シティの「空」だ。 今日、久しぶりに千葉に車で移動し、高速道路で千葉県に入り少し走って「あ、千葉の空の色だ」と思ってしまったのだ。 無論、それはおそらく気のせいで、日本の、関東地方の空だけが映る映像を見せられて「どこの空か」と尋ねられて当てられる自信はない。無論、世界のどの「空」でも自信はないのだが。 おそらく、周辺の施設によっ…
古橋秀之作、ブラックロッドを読んだので感想を書きます。 今年発売された愛蔵版ではなく、古い方を読みました。 本作は第二回電撃ゲーム小説大賞【大賞】受賞。初版は1996年、まぎれもなくライトノベルの古典的名作。第一回受賞の高畑京一郎と第二回受賞の本作はかなりライトノベルのいうジャンルの形成過程に影響を与えているはず。 表紙が雨宮慶太というのも豪華でいい。 このころは宣伝も豪華で、ラジオドラマも作られたりしており、お金のあった時代だなあと思うばかり。ラジオドラマカルチャーってだいぶ下火になって、ラノベのラジオドラマは絶滅しましたね。オーディオブックはあれはあれでいいけどラジオドラマとは違うし、ドラ…