5.0地方人の感慨として、東京へ出た同期が、まぶしい──というのがある。男は栄進し、女はきれいになる。知らない人であれば、きれいとは思わないかもしれない。でも、知っている人だと──都会へ出て、洗練に浴して、変わった=きれいになったと、すごく感じる。これは、卑下のような気分でもある。 臼杵と東京を行き来する祐作が、そのたび駅で雪子と別れを交わす。そのときの雪子の発言がなごり雪の歌詞「春が来てきみはきれいになった、去年よりずっときれいになった」に重なる。 ただじっさいには、雪子はこう言う。「~わたしあなたに約束するわ、わたし今はだめだけど、来年の春までに、きっときれいになる。うんときれいになってあ…