今年は戦後を代表する詩人、田村隆一の生誕百年。田村の石礫(いしつぶて)のような物質的な言葉からは、今なお新鮮な反戦感情がまっすぐに立ち上がる。「わたしの屍体を地に寝かすな/おまえたちの死は/地に休むことができない/わたしの屍体は/立棺のなかにおさめて/直立させよ」(「立棺」)。田村を始めとする戦後詩人たちの言葉の底には、内面化された戦争体験と、戦死者たちの怒りの声がある。それゆえ人類の歴史と文明の総体に、否定を突きつける強靭な詩性の輝きを放っている。 森川雅美『疫病譚』(はるかぜ書房)の作者は、コロナ禍という危機に際し「詩人として何ができるのか考え、日本の疫病の歴史を調べ始めた」。そして「歴史…