河盛好蔵(1902 - 2000)『井伏鱒二対談集』(新潮文庫、1996)より無断切取り。撮影:田沼武能 目立たぬ功労者の踏んばりによって、歴史は底支えされてきた。多くのかたがたにまで、知っていたゞく必要はないことだけれども。 ポール・ヴェルレーヌの有名な詩の冒頭。巷に雨の降るごとく、わが心にも涙降る。どんな雨だったろうか。静かに降りそゝぐパリの夏の雨か、ロンドンの十月の雨か。複数の説があるらしい。いかなる雨かによって、たしかに詩情はいくぶんか異なってくる。詩人によって詠われた時期を特定し、その時分の身辺事情や心境を考察することで、詩人の真意を推しはかれよう。 かつてお訊ねがあったのでロンドン…