フリー画像「血涙」 ――― ――― ――― 〇プロローグ この世に生を持ってから、足掛け12年…… それまでずっと、甘やかされ続けてきた。 満11になって、初めてそれに気づいた。 暑い夏だった。 それからさらに14年経ち、25になった今でも、その熱気をまざまざと思い出せるような、生々しい夏のことだった。 祖父さんが死んだ。 祖父さんは、しばらく前から身体を壊し、入院していた。 しかし、死ぬなんてことは、考えていなかった。 訃報を聞いてなお、実感が無かった。 目の前に横たわり、そして棺桶の中に運ばれる、生気のない祖父さんの亡骸は、亡骸に過ぎず、別の物体のように思えた。 実感が沸かないというのが主…