犯罪ではあるのだが、否、むしろ犯罪であるがゆえにこそ。 密造という行為には、妙に浪漫を掻き立てられるものがある。 敗戦直後、苛酷なまでの課税によって価格が鰻登りに高騰したのはなにも酒のみに限らない。 煙草もまた同様だった。 具体例をとって示そう。ここに白黒広告がある。例によって例の如く、昭和二十六年の『酒のみとタバコ党のバイブル』に掲載された代物だ。 二段目に着目していただきたい。「ピース」十本入りが五十円。ラーメン一杯二十五円のご時勢に、たった十本で五十円だ。この時点で馬鹿にされているようなものだが、更に内訳をたどってみると、なんと四十円九十二銭が税金から成っている。 全体の、実に八割以上の…