ドヴォルザークの新世界交響曲を生演奏で聴きたかったので、はるばる鉄道を乗り継いで刈谷市まで出かけた。 我が家にまだステレオのなかった子供の頃、卓上のレコードプレイヤーで何度も聴いていた。カラヤン指揮ベルリンフィルのLPレコードだった。 親しみやすい旋律と勇壮な金管楽器の響きに心を奪われ、いつかはもっといい音響装置で聴いてみたいと夢見ていた。その後夢は現実となり、折に触れ聴いてはいるが、かつての感動は何故か風化しつつある。音楽に感銘を受けるのは音響の良さではなかった。 旅先での夕暮れ時、子供たちが家路につく。夕餉の支度をする家からいい匂いが漂ってくる。街に音楽が流れる。新世界の第2楽章「遠き山に…