序文・名誉と権威 堀口尚次 源氏長者(げんじのちょうじゃ)は、源氏一族全体の氏長者の事を指す。原則として源氏のなかでもっとも官位が高い者が源氏長者となる〈現任上首〉。源氏のなかでの祭祀、召集、裁判、氏爵(うじのしゃく)〈朝廷において行われた氏の氏人の中から推挙された者を従五位下の位階に叙す制度〉の推挙などの諸権利を持つ。一般的には、奨学院〈公家の教育機関〉・淳和(じゅんな)院〈淳名天皇の別荘〉の両別当〈長官〉を兼任するといわれているが、自身も源氏長者だった北畠親房の『職原鈔』によれば、奨学院別当のみでも要件を満たし、その場合、次席が淳和院別当となると解説している。 源氏長者は、当初は嵯峨源氏か…