公園の入口では、満開のバラが出迎えてくれる。花壇へと歩を進めれば、赤・白・黄色と春の草花が、行儀よく整列している。ふだんであれば、気持の好い散歩コースのはずなのだが。 庄司理髪店が、かれこれひと月以上も店を休んでいる。「お客さまへ 体調不良につき しばらく休業いたします」と、簡にして明の貼紙が出ている。ご先代マスターの時代から、四十年も通ってきた理髪店だ。 ご先代ご他界後は、息子である現マスターとご母堂との、お二人の店だ。散髪が済んだところで、もし他にお客さまがおられなければ、茶菓を出してくださり、三人でしばらく暢気な世間噺に耽る。お返しというわけでもないが、半年に一度は、手土産の菓子折を持参…