1961年製作のフランス映画。
原題『La Pyramide humaine』。
監督は映像人類学者として知られるジャン・ルーシュ。
地元の高校生の人種差別問題に気づいたルーシュは、この問題を主題に16ミリ映画を撮ることを思いついた。
1959年7月の夏休みを利用して撮影が始められ、無声で10時間分撮影された後、9月に仮編集された。
その後、年末のクリスマス休暇、翌年の復活祭休暇を利用して追加撮影が行われた。
最後の撮影はパリの撮影所に作られた教室のセットで既にパリで勉学中の5人に加え、アビジャンから5人の若者を呼び寄せて行われた。
16時間にのぼる撮影素材は、半年間の編集を経て、92分の映画作品となった。
なおコート・ジヴォワール共和国は1960年8月7日に独立、この映画はその後の1961年4月19日に公開された。
「この映画は黒人と白人の青年グループの中に作家が喚起した実験である」。
黒人のドニーズと白人のナディーヌは、ともにパリで学ぶ大学生だ。だが、彼らは一年前、コート・ジヴォワール自治共和国の首都アビジャンのココディ高校に通っていながら、互いに面識もなかった。
ジャン・ルーシュが、白人グループと黒人グループのそれぞれの最終学年の高校生たちと面談する。
アフリカに来たばかりの新入生ナディーヌが自己紹介する。彼女の目から見た同級生たち。素朴な彼女には人種差別問題が理解できない。
友情、恋、音楽、踊り、詩……。ナディーヌの編入によって、白人グループと黒人グループの交流が始まる。
ドニーズはナディーヌにアフリカの抱える政治問題への興味をもたせようとする。
誰とでも分け隔てなく接するナディーヌは異性の誤解を招く。
やがて映画の中の悲劇が生じ、白人グループと黒人グループはまた分離してしまう。
「映画の終わりがヴァカンスの終わりだ」。「映画は終わるが彼らの物語は終わらない」。