豊後佐伯湾に浮かぶ大入島を訪問した時に初めてその歌を知った。お恥ずかしい限りである。その歌碑が島の北東海上の岩礁の上にある。ここに来て万葉の人々へ思いを馳せる人もいるのだろうか、いるとすれば、どういう人なのだろうと気になってくる。 万葉集の歌は4,500余首ある。それだけで読もうという気を削がれるが、現在まで実に多くの解説本が出ている。正直、それさえ選ぶのが面倒である。それでも豊後に絞ってゆかりの歌を探してみると十数首ある。官道を往還する時に眺めやったのであろう豊後の著名な山々(由布岳、久住山、高崎山)も歌われている。冒頭の海部郡の名も無き民が詠んだ歌もその中にある。万葉集のほとんどは名も無き…