1666年10月7日,時のイギリス国王・チャールズ二世の「衣服改革」によって,この世に新しい服が生まれた.以来,現代と同じ「スーツ」が十九世紀後半に登場するまでのイギリス男性服の変遷をたどり,スーツの魅力と奥深さを考える.貴族の処世術としての服から,ダンディとジェントルマンの闘い,フランス革命をへて,スーツがいかに歴史の荒波をのりこえ,現在の形に完成したのかを探る――. 深井晃子監修『世界服飾史』(美術出版社,1998)をみれば,フランス政府は国家的産業としてファッション文化を保護し続け,フランス革命後は大衆社会の流行性を決定付けたパリのモード,産業革命後の機能的・実用的なダンディズムの服型の…