About a Boy
無職のウィルは、ロンドンで独身生活を謳歌する38歳だ。亡き父親が放ったクリスマス・ソングを一発当ててくれたお陰で、印税生活を送れるのだ。ある日ウィルは、いじめられっ子の12歳マーカスと出会う。そこから2人の奇妙な関係が始まるのだが・・・。
大人になり切れない軽薄な男と、孤独な少年の交流を描いたコメディ映画の秀作。子供が出てくるからと言ってもこれみよがしのお涙頂戴ではなく、ドライなタッチなのが大人の観客には嬉しい。
ヒュー・グラントは全くの自然体演技で素晴らしい。彼の代表作ではないだろうか。自分や責任から逃れてばかりいた彼が、意を決するクライマクスの音痴振りは、涙と笑いを禁じ得ない。マーカス役ニコラス・ホルトも、ルックスだけ見ると可愛くないし、冷めているのだが、魅力的に見えてくる。鬱病気味のマーカスの母親役トニー・コレットも好演。「原始人」ルックで親子で『Killing me softly』を歌う場面は爆笑ものである。出番は少ないながらもパワフルなのが、レイチェル・ワイズ。ウィルが惚れるのも当然と思わせる。
ワイツ兄弟の演出は『アメリカン・パイ』に比べて格段に洗練されている。驚きなのは、これがアメリカ人監督によるものだということ。イギリスのワーキング・タイトル社作品とは言え、予備知識無しに観たら、イギリス人監督によるイギリス映画に観えることだろう。