関数fの連続性を定義する一つの方法。ε-δ論法とも書く。
実数から実数への関数fはaに充分に近いxに対して、いつでもf(x)がf(a)に近い値を取れば、fはaで連続である。例えば、f(0)=1、f(x)=0(x≠0)として定義するとfは0以外のどの点でも連続であるが0では非連続だ。往々にして以上の定義で十分かもしれないが、実際には「充分に近い」あるいは「近い」とは何かが、より複雑な関数では問題になる。よって、正確には「任意のε>0に対して、ある数δ>0が存在し、|x-a|<δであるどんなxに対しても|f(x)-f(a)|<εが成り立てばfはaで連続である」と定義する。fが任意の点において連続であれば、単にfは連続であると言う。上記のεとδを使った関数の連続性に関わる議論をεδ論法と言う。
大学で学習する高等数学の壁のひとつ。
不動産屋:お客さん、このへんは段差のない土地でっせ。 客:段差ゆうてもなぁ。デコボコはしとるなぁ。まあ1mの段差とかはないみたいやな。 不:デコボコしとっても段差はおまへん。実際試してみなはれ。どの場所でもええから、 そやな、半径3mの円書いてみなはれ。そんなかの高低差は1m以内になりまっせ。 てことはやな、1mの段差はない、っちゅーことですわ。 客:でもな、歳取って車椅子とかんなると10cmの段差もこたえるんやわ。 不:ほならお客さん、そやな、1mの円を書いてみなはれ。高低差10cmはないはず ですわ。 客:ほうほう。ほんならついでや、1cmならどないや 不:なんぼでも言いなはれ。10cmの円書けば大丈夫ですわ。 客:ほんなら1mmなら 不:3cm ... ... 客:ほんならε 不:δ
例えば、
として、この関数がf(1)で連続かを考える。
この不等式において、イプシロンが任意の時にx=0とされると不等式が成立しない。そこで、ある数δをδ<1とすると、この不等式は成立する。つまり、
が成り立つため、f(x)はx=1で連続である。
一方、f(0)で連続かを考えたとき、
この不等式において、x=0でないかぎり不等式は成立しない。そして、xは |x-0|<δ の範囲で定義されるため、δが0<δである以上、どのようなδを定義しても絶対値がδよりも小さい範囲でxが定義されるため、x=0とならずに不等式は成立しない。つまり、任意のε>0に対してδが存在しないため、 f(x)はx=0で不連続である。
εδ論法は、実数に限らず一般に任意の距離空間Xから任意の距離空間Yへの関数fの連続性の定義として使える。さらに「Yの任意の開集合のfによる引き戻しがXの開集合となる」という一般の位相空間上でのfの連続性の定義と、距離空間において同値となる。
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