様々な事情により親が育てられない新生児を親が匿名で特別養子縁組をするための施設及びシステムの通称のこと。日本では熊本市の慈恵病院が初めて設置し、「こうのとりのゆりかご」と名づけられている。この取り組みはドイツで始まり、ドイツではベビークラッペと呼ばれ、すでに100以上の施設が導入されている。またアメリカ、スイス、イタリア、チェコ、ベルギー、インド、韓国、オーストリアなどでも類似のシステムは運用されている。
慈恵病院のこうのとりのゆりかごの場合は、病院の東側に60cm×50cm大の扉があり、内部には気温が常時一定に保たれた保育器(インファント・ウォーマー)が設置されている。新生児が入れられるとアラームが鳴り、医療従事者が駆けつける。監視カメラが設置されているが、親の匿名性を守るため子のみしか映らない。そこに入れられるのは生まれてから2週間以内の子供に限られる。扉を閉めると、新生児の連れ去りを防ぐ「自動ロック」により、入れる側からは開けられなくなる。
預けられた子供はまず慈恵病院の医師が健康状態を確認する。親が出産前に慈恵病院と話し合いをするなどして意思の疎通が出来ている場合は、実親の合意があれば子供の福祉のために比較的早い段階で養子縁組がなされる。実親の合意がない場合やゆりかごの利用者などで親との意思疎通がなされていない場合は、親が後から考え直して子供の引き取りを申し出てくる可能性も考え(これは慈恵病院が参考にしたドイツの例でも同様である)、いったん熊本市児童相談所により県内の乳児院に移される。乳児院は熊本市の熊本乳児院と慈愛園乳児ホーム、八代市の八代乳児院の3か所。その後一定期間を置いたあと特別養子縁組が行われる。病院での医療費や乳児院での措置費と子供の生活費は国と熊本県または熊本市が折半する形で支給される。子供の戸籍は熊本市長が作成する。
2014年1月に行われた慈恵病院の院長による講演によると、設置から平成25年11月までに同病院が直接相談を受けた事例やゆりかごの使用者のうち、養子縁組に至った事例や自分で育てることにしたケースはともに200件前後あり、慈恵病院の取り組みにより累計で少なくとも453人の赤ちゃんの命が堕胎などから救われたとされる。