この同じ月の二十幾日に譲位のことが行なわれた。 太后はお驚きになった。 「ふがいなく思召すでしょうが、 私はこうして静かにあなたへ御孝養がしたいのです」 と帝はお慰めになったのであった。 東宮には承香殿《じょうきょうでん》の女御のお生みした皇子が お立ちになった。 すべてのことに新しい御代《みよ》の光の見える日になった。 見聞きする眼に耳にはなやかな気分の味わわれることが多かった。 源氏の大納言は内大臣になった。 左右の大臣の席がふさがっていたからである。 そして摂政《せっしょう》にこの人がなることも当 然のことと思われていたが、 「私はそんな忙しい職に堪えられない」 と言って、 致仕《ちし》…