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総力戦

(一般)
そうりょくせん

すべての戦力を投じた戦い。すべての力をあげて戦うこと。
狭義には、total warの(あまり適切とは言いかねる)訳語。国家総力戦。

トータルウォー

国家の総力を組織化して遂行される戦争。総力とは、軍事力に限らず、国家の持つ生産力や経済力を含む。場合によっては、報道や芸術といった分野までも含めた国力要素すべてを戦争に投じることを前提する。
制限戦争の対義語とも言える*1

原型

その萌芽はフランス革命によるナショナリズムという怪物と徴兵制度によって準備されたと見ることもできる。が、産業革命とそれにともなう種々の技術革新によって、戦争に要求される産業面でのリソースが巨大化したことも同様に*2重要である。
戦争の空間的拡大は必要とする兵力の巨大化を招き、蒸気力、つまりは製鉄業や鉄道や蒸気船といった産業革命の申し子たちが戦力要素に組み込まれることで、産業力がそのまま国家の戦闘力に直結することが明らかとなった。

ACW

こうした中で、最初のトータルウォーとして戦われたのはアメリカ南北戦争だった。
南北いずれもがヨーロッパの常識を超える巨大戦力を短時間に建設し、それが大西洋岸からミシシッピーまでの各所で激突を繰り返した。
戦争の詳細は省略するが、そもそも戦争に勝利するために北軍のスコット将軍が開戦直後に立案した「アナコンダ作戦」が南部連合領域への封鎖作戦である*3という時点で、トータルウォーとなることは確定的だった。

南部連合の軍事力は決して侮れるものではなかったし、リーを筆頭に南軍の将帥もよく戦ったとは言える。
しかしトータルウォーとしての本質を理解していたのは北軍であった。リンカーンは罷免要求にもかかわらずグラントを留任させ、グラントは多大な損害を出し続けても前進を止めず、最後にシャーマンが「海への進撃」を行って南部連合の産業基盤を破壊したことで戦争は終わった。
南北両軍とも、戦術の革新が技術革新(ライフル銃の導入)に追いついてなかったために巨大な出血が戦場で発生した。継続的な補充兵の供給がなければ将来の戦争を戦うことが不可能なのは明白な事実となった。
長期間にわたる戦争*4で大量の物資が消費されたことで、国家の準備すべき戦費と生産力が莫大なものになることも明らかになった。

具眼の士が見れば、これらはいずれも次世代の戦争の様相に対する不気味な警告をなしていた。もちろん、他人の経験に学ぶのは賢者の特権であって、自分で経験するまでは人間はなかなか物事を理解できないと相場が決まっているものである。

第一次世界大戦

狭義のトータルウォーという言葉が生まれた場所。古き良き世界の終焉。
第一次世界大戦の主要参戦国は、国家を挙げての動員を余儀なくされた。迂回を求めて延翼を繰り返した結果、北海からアルプスにいたる巨大な連続した戦線が発生し、戦前には想像もできなかったほどの巨大な戦力がそこに投入された。
巨大な動員(と出血)が、(今や戦場におとらぬ重要性を持つようになった)生産現場から男子の働き手を奪い取り、いずれでも女子労働力が大々的に投入されるようになった。
トータルウォーという言葉はルーデンドルフの戦争のやり方を指すものとして生まれたとされる。が、彼の登場以前からみんな「トータルウォー」を行っていた*5
この時点での都市への砲撃や爆撃は、(技術的制約から)敵国民の士気を脅かす程度のものに過ぎなかったが、なんにせよ「銃後」も戦場なのは確かで、生産と動員が追いつかなければ戦わずして負けることになるは明らかだった。ならば、生産力を直接破壊する手段が出現したらどうなるのか? 答は20年後にやってくることになる。

*1:対義語ではないとも言える

*2:もしくはそれ以上に

*3:そしてそれが一番有効だった

*4:戦争が始まった時点では、南北いずれも相手の首都を占領すればすぐに戦争は終わるなどと考えていた。そこから考えれば信じられないぐらい続いた

*5:ほどほどに戦って多少の領土や威信のやりとりで決着を付けるというヨーロッパ的な知恵を捨てさせた原因が、彼の誤った絶対戦争観にあったのかという点は議論の余地があるが

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