しおかぜ町から2023/11/19黒崎樹里亜と対面する - しおかぜ町から 少し脚を開き気味にして、 黒崎樹里亜が舞台に立った。 「スタート」 キンパッつぁんが手を一度叩いた。 数秒間の沈黙。 大きく息を吸い、彼女が最初のセリフを発する。 静かだが、よく通る声。ホールに充満した。 「私は生きて来た」 微笑む。微笑んだだけだが、舞台上の演技だ。 大きく表情を動かしている。 「この森で生きて来た。 仲間といっしょに大きくなった。 小さい頃は、強い風に倒されそうになったけど 今は、根をはって生きている」 両手を広げる。その手の指先を左、右と見る。 「私の枝に、鳥が巣を作ったこともある。 卵を産み、あ…