ひとたび足を地につけ、そこでバランスをとることを覚えた瞬間、人は永遠に大地から離れられなくなる。 (グエン・ゴック・トゥアン/加藤栄・訳『囚われた天使たちの丘』) 朝方、5時ごろだったと思うが、胸の悪さで目が覚めた。目が覚める直前にげっぷしたような感触があった。しばらく横になっていたのだが、あんまりよくならないふうだった。胃をやっているときの気持ち悪さとはちょっと違った。逆流性食道炎っぽいなと思った。どうなるかわからんが試してみようと思い、体を起こして寝床に座ってみると、せりあがっていたものがみるみるうちに落下していくのがわかった。それでひと心地ついた。人間なんてしょせんは一本の上等な筒に過ぎ…