コンパクトで簡素な造りの詩集を手にする。第7詩集。43篇を収めている。手作り風でちいさくて、でも内容は濃く、個人詩誌『くり屋』に通じていると感じた。どちらも一筋縄ではいかないものを持っている。 台所用品が題材となっている作品でまとめられていることもあり、出てくる物や光景は見慣れたものが多い。テーブル・ガスコンロ・フォーク・湯呑・スリッパ、などなど。暮らしに密着したそれらの物が、ふとしたはずみに時間の裂け目を見せる。 詩「テーブル」では、レストランでN夫妻がいつまでも来ない料理を待っている。こんなことで声を荒げてはいけない、そんなに空腹でもないし、と気長に待とうとするのだが、待っている間にコップ…