「ものども、よろしく馬を飼え」 こういう趣旨の「お達し」が、政府の威光を以ってして官吏どもに下された。 明治十七年八月一日の沙汰だった。 世に云う乗馬飼養令である。 内容につき要約すると、 「官員にして月給百円以上の者は最低一頭、 月給三百円以上の者は最低二頭、 各々の責任に基いて、乗馬を所有し飼育せよ」 こんな具合になるだろう。 軍馬の不足は当時の政府の大なる課題の一つであって、いざ鎌倉という際に必要量を「どこから」「どうして」掻き集めればよいものか、容易に目処が立てられず、そろばん片手にウンウン懊悩し続けて、考えあぐねた挙句の果てに生み出されたのがコレだった。 窮余の一策といっていい。 「…