新刊を出している小説家でこれから読まれていく作家は誰か? と訊かれたら、私は「小川哲」と答えると思う。 小川哲の作品は、「つくりたいもの」がはっきりしている。その「つくりたいもの」は別に読者の感情を操作しようとしたりするものではないし、「どういう展開になったら面白いか」が作者に問われる週刊連載のマンガとも違う。全て簡潔に一つの方向に収束していって、揺るがない人間の「エゴ」を書き通している。 (ここで言うエゴとは自我のことである)。 『君のクイズ』で語り手になるのは「クイズオタク」である。彼はクイズ番組で決勝大会に進み、本庄絆という人物を前にして敗れる。絶対負けない、という自信があったけど、予想…