3作目のNHK大河ドラマ。1965年放映。原作は吉川英治の『新書太閤記』。第一回目の冒頭ではいきなり前年に開業したばかりだった東海道新幹線の映像が流れ、人々の度肝を抜いた(NHK局内でもニュース映像が間違って流されたのではないかと一時騒然となったという)。この冒頭シーンから秀吉の生地が現在の名古屋駅近辺であることが紹介され、物語へと入っていくという演出は、もともとドキュメンタリー番組を手がけていた同作のディレクター・吉田直哉の「歴史とは現在と過去の対話」という考え方を反映したものであり、その考えは以後の大河ドラマにも受け継がれている。ほかにも、主演の豊臣秀吉役を当時新国劇のホープであった緒形拳が務めたのをはじめ、文学座の研究生だった高橋幸治(織田信長役)や慶應の学生だった石坂浩二(石田三成役)など若手俳優の起用は、それ以前につくられた二作の大河ドラマ(『花の生涯』『赤穂浪士』)の主演がそれぞれ尾上松緑と長谷川一夫という大御所俳優であったことを考えると画期的なことであった。このことからも、『太閤記』が現在の大河ドラマの直接の原点となっているといえるだろう。なお、高橋演じる信長は大人気を博し、視聴者から殺さないでと嘆願書がNHKに殺到したことから本能寺の変が予定より先延ばしされたことは有名なエピソードである。