1975年(昭和50年)10月4日より1976年(昭和51年)3月28日まで全26話にわたって放送されたテレビ番組。
これまで『おらんだ左近事件帖』など正統派時代劇の主役を演じてきた高橋英樹が、闇の殺し屋を演じる異色作。
法では裁けぬ難題や悪人を人知れず解決してくれると言われる「九丁堀稲荷」への願い文を依頼とし、元大盗賊であるからくり仁左ヱ門たちの協力を得て調査を開始し、浮き彫りとなった悪人を闇から闇へと葬るのが一連の流れ。
スタッフには、同じく必殺亜流時代劇『影同心』のメインライターである飛鳥ひろしを中心に、『水戸黄門』『大岡越前』『舞台版あしたのジョー』の土橋成男、『地方記者立花陽介シリーズ』の岡本克己、『子連れ狼』の国弘威雄といった面々が脚本を担当。監督には『影同心』の松尾正武、『必殺シリーズ』の田中徳三、『鬼一法眼』『奇兵隊』の斉藤武市、『素浪人 天下太平』『桃太郎侍』の井沢雅彦が参加した。
必殺シリーズの亜流とも言える作品で、序盤こそ必殺シリーズを意識した暗めの作劇がなされているが、高橋英樹のキャラクターが闇の殺し屋としての鬱屈した表情よりも正統派時代劇ヒーローに近い形で描かれているため、酷く陰惨ではなく幾らか明るいタッチで描かれている。
キャスト
榊夢之介 |
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高橋英樹 |
鉄平 |
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桜木健一 |
おくみ |
: |
栗田ひろみ |
おしん |
: |
児島美ゆき |
秋山九蔵 |
: |
深江章喜 |
菊造 |
: |
木田三千雄 |
マサ |
: |
下之坊正道 |
おはな |
: |
三田雅美 |
伝八 |
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桂小かん |
おさよ |
: |
丘さとみ |
からくり仁左ヱ門 |
: |
片岡千恵蔵(特別出演) |
登場キャラクター
- 榊夢之介(高橋英樹)
- 南町奉行所の同心として辣腕を揮い、特にその勘の良さで数々の手柄を立てていたが、同心の立場では真に弱き者を救うことが出来ないと考え南町奉行所を退職し人助けの道に入った。表向きは空き寺に居候しながら金魚の飼育を行い暮らしを立てている浪人の姿だが、端の稲荷に依頼文と依頼料が投げ込まれると寺の鐘を鳴らし仲間を招集。問題解決に向けて動き出す。裏の稼業においてもその鋭い勘は冴え渡り、そのため仲間と喧嘩をすることさえあるのだが、自分の信念を曲げない人柄による人望は大変厚い。知識も豊富な上、剣の腕前についても言及こそされてはいないが、恐らく免許皆伝。徹底的に悪を許さず、場合によっては拷問を行うなど容赦がないことから、別名「九丁堀」と裏社会の人間からは恐れられている。悪を斬る際には「貴様らごとき悪党には……十手無用!」の決めセリフがある。
- 鉄平(桜木健一)
- 仁左ヱ門と同じお天気長屋に住む屋根職人。妹の おくみ と一緒に暮らしている。明るい性格の江戸っ子で、曲がったことが嫌いな性分。それ故に、裏の稼業にも情をかけることもあり、夢之介や仁左ヱ門に諌められる。母親が死んでからは おくみ と共に家を飛び出し親戚の家に身を寄せるが、二人とも角兵衛獅子に売られ日本各地を転々とした辛い過去を持つ。また、仁左ヱ門が盗賊稼業をしていた頃の配下であったとも考えられる。盗賊稼業と角兵衛獅子で培った身軽さを活かし、相手の屋敷に潜入し動向を調査するなどの密偵活動を主に行う。殺しの獲物はかぎ縄と小判。かぎ縄を相手の首に絡ませて動きを封じ、刃物となっている小判で頚動脈を切り裂き絶命させる。
- おくみ(栗田ひろみ)
- 鉄平の妹。明るい性格でしっかり者。慌て者の兄にしっかり者の妹と言う事で、バランスが取れた兄妹。年頃でもあることから、一度塾生と恋に落ちたこともあったが、悪人に惨殺され悲恋に終わる。裏の稼業のことも承知しており、目撃者を発生させないよう標的の口を塞ぐなど夢之介や鉄平、仁左ヱ門のサポートを務める。
- おしん(児島美ゆき)
- まだ若いにも関わらず、江戸一円を範囲とした金貸しを営むバイタリティ溢れる娘。江戸より数里離れた宿場の住人にも金を貸している。黙っていればとても可愛らしい女の子なのだが、職業柄非常に気が強く周囲からは「深川の鬼娘」と言われている。夢之介にベタ惚れで、出会えば必ず傍に寄り甘い声で誘惑(?)する。また、厳しい借金の取立ても、夢之介に貸した金の取立てに対しては「お金の返し方はいくらでもあるんですから……」と猫撫で声になる。九丁堀の仕事についてはある程度理解しており、夢之介の頼みにより囮となり、相手に捕らえられたこともあった。後半、おさよ が登場すると、夢之介を巡ってライバル心を剥き出しにしていた。
- 秋山九蔵(深江章喜)
- 南町奉行所定廻り同心。夢之介の元同僚で今でも交友がある。とてつもない大食漢で、何もないときで丼飯5杯、悩み事があって食欲がないときでも丼飯3杯は食べる。しかし、奉行所同心の権利によりタダ飯となるので、豆狸の おはな と伝八は気分が良くない。職務態度については緩慢でとても優秀とは言えず、剣の腕も立たない上に悪事を金で見逃すこともあるなど事なかれ主義を貫き通しており、凶賊が江戸を荒らしまわっている時には「たかが三十俵二人扶持で命なんか張りたくねえ。賊に出会ったら俺は真っ先に逃げようと思っているんだ」など最早職責を放棄したような物言いをすることもあり、そんな態度に苛立ちを覚えることもある夢之介だが、なぜか憎めないでいる。夢之介が九丁堀稼業を行っていることは全く気付いておらず、同心しか知りえぬ情報を漏らしてくれるため夢之介の良い情報源となっている。最終回では上役の助言により九丁堀=夢之介と睨み目を付けるが、夢之介たちが真の悪を撃退したため結局見破ることは出来なかった。鰻が好物。
- 菊造(木田三千雄)
- お天気長屋に住む初老の役者。女形が専門で様々な芝居小屋で演じている。九丁堀では密偵活動を主に行うが、実際に手を下すこともある。昔なじみの道具方が殺されたときには、仇を討ってと哀願した。仁左ヱ門の配下であることから、盗賊稼業の頃の仲間であることも考えられる。獲物は赤い傘。傘を開いた状態で背後から相手の前へ降ろして行く手を塞ぎ、柄の部分に仕込んである刀で相手の背中を一突きする。
- マサ(下之坊正道)
- 仁左ヱ門の片腕。恐らく仁左ヱ門が盗賊稼業を行っていたときからの懐刀といったところではないだろうか。常に仁左ヱ門の傍に無言で控え、鋭い目を光らせている。滅多に喋りはしないが、たまに確信を突くことや、悪に対しての強い怒りを口に出すこともある。仁左ヱ門が殺しの際に使う竹串に塗る毒であるトリカブトは、マサが山で掘ってくるという設定。もちろん自らも殺しを行い、モリのような先端が尖った獲物で相手を突き殺す。短い獲物だが、殺傷力は高いようだ。
- おはな(三田雅美)、伝八(桂小かん)
- 夢之介たちが集まる定食屋「豆狸」を切り盛りしている。同心の権利でタダでご飯を食べている九蔵に、いつも小言を言っている。
- おさよ(丘さとみ)
- 15話「おさよ無残」から登場した準レギュラー。職業は芸者。元々は「自分と同棲中の若者に親の仇を討たせたい」という依頼人の立場で夢之介たちに接触してきた。結果悲しい結末となってしまったが、これを機会にお天気長屋に住むことになった。しかしその後も災難は続き、17話では夢之介への復讐を窺う盗賊の手によって故郷で暮らす妹夫婦が殺されてしまうなど不幸が連続した。夢之介とは年も近いせいか良き話し相手で、おさよ 自信も満更ではないようだ。「まだ子供も産めてよ?」と誘惑するときもあり、おしん からはライバル心を抱かれている。もちろん、九丁堀についても把握しており、夢之介たちの行動に力を貸す。
- からくり仁左ヱ門(片岡千恵蔵)
- お天気長屋に住む大工の棟梁・仁左ヱ門だが、実はその昔江戸で名を馳せた大盗賊・からくり仁左ヱ門であることを知る人間は少ない。盗賊時代の仲間と思しきメンバーと一緒にお天気長屋に住み、夢之介と共に九丁堀稼業を行っている。表、裏、両方の世界で広く顔が利く上、長年培ってきた経験と勘により悪を糾弾する。夢之介と仁左ヱ門はお互いを認め合っているのだが、仁左ヱ門自身の性格に頑固なところがあり、仁左ヱ門が30年振りに出会った親友の正体を見破る際には、夢之介との意見の食い違いにより一度絶交したこともあったが、最後には素直に自分の非を認め仲直りをした。自分より若い鉄平やマサを気遣うこともあるなど、懐の深さも垣間見える。しかし、裏の仕事に絡むお金のことについては少々うるさい。殺しの獲物は先端にトリカブトの毒が塗ってある竹串。スイッチを押すと自動的に発射される特別細工の筒に入れ、相手の首筋や眉間を狙う。意外と射程距離は長い。殺した後の決めセリフは「地獄へ行きやがれ」。
スタッフ
企画 |
梅谷茂・垣内健二・渡辺洋一 |
プロデューサー |
小林進・田村嘉 |
音楽 |
渡辺岳夫 |
主題歌 |
「都忘れ」作詞:岩谷時子/作曲:渡辺岳夫/編曲:瀬尾十三/唄:ドド |
助監督 |
尾田耕太郎 |