// 降りしきる雨の中。 妹をおぶり、傘を首に挟んだ不安定な恰好でたたずんでいると、となりに何者かの気配がした。 足音も物音もした覚えは無いのに。 この雨音がかき消してしまったのだろうか。 いや、そんなことはどうでもいい。 確かにとなりに ナ ニ カ イ ル。 心臓が高鳴る。 しかしこの雨の中、妹を背負ったまま走ることは困難だ。 息を殺し、傘の柄をギュッと握りつつも、恐る恐る視線を左に動かした。 クマを彷彿とさせる巨大な動物が、すぐとなりに2本足で立っているようだ。 殺される…。 逃げられない。力でも勝てない。声を出してもここは山の中。 …いや? なぜこの動物は、身体をこちらに向けずに立ってい…