[英] plum pox virus (略称:PPV)
プラムポックスウイルスとは、モモ、スモモなどのサクラ属の植物に広く感染する重要な植物ウイルス。ウメ輪紋ウイルスともいう。
1915年にブルガリアで発見されて以来、欧州、アジア、北米、南米等でも確認されている。
日本では、2009年に東京都青梅市にある吉野梅郷のウメで初めて確認された。
アブラムシにより媒介されるほか、穂木や苗を経由して感染する。生果実は感染経路にはならないとされている。
また、感染から発症まで3年間程度の潜伏期間がある。
モモやスモモでは、葉に退緑斑点や輪紋が生じるほか、果実の表面に斑紋が現れ、商品価値が失われたり、成熟前の落果により減収するとの報告がある。また、ヒトや動物に感染しないため、罹病果実を食べても健康に影響はない。
ウメでは、葉に退緑斑点や輪紋が生じるほか、花弁にブレーキング症状(斑入り症状)が現れることもある。なお、これまでのところ果実への顕著な症状は見られていない。
治療薬やワクチンはなく、感染、発症した場合には伐採し、感染の拡大を防ぐしかない。また、伐採後は潜伏期間を考慮して、一定期間感染が認められないことが確認できてからでないと、同じ場所には植樹しないことになっている。
根本的な予防法などもなく、感染源であるアブラムシの防除の徹底、無病健全な苗の使用といったものくらいしかない。
日本では、植物防疫官が感染を確認した植物及び感染のおそれがあると判断した植物は、発生場所に応じて基準を設け、所有者の了解を得た上で速やかに処分することになっている。
日本では、2014年4月現在までに、東京都、埼玉県、茨城県、神奈川県、大阪府、和歌山県、奈良県、兵庫県、滋賀県、三重県の計10都府県で感染が確認されている*1。
2009年に日本で初めて感染が確認された東京都青梅市の吉野梅郷にある「青梅市梅の公園」では、2014年春までに約1,700本すべてを伐採した。
2012年に感染が見つかった兵庫県伊丹市では約24万本を処分した。盆栽梅の産地で感染木が移動する恐れが高いと判断されたためである。
農林水産省でも、植物防疫法(昭和25年法律第151号)に基づき「プラムポックスウイルスの緊急防除に関する省令」(平成22年農林水産省令第4号)及び「プラムポックスウイルスの緊急防除に関する告示」(平成22年農林水産省告示第188号)を公布し、2010年2月20日から緊急防除を開始した。
プラムポックスウイルスの封じ込め及び根絶を図るため、防除区域内において、次の防除を行う。
ただし、植物防疫官による検査の結果、感染していないと認められたものは除く。
サクラ節を除くサクラ属(ウメ、モモ、スモモ、アンズ、ネクタリン、オウトウ等)、セイヨウマユミ、ナガバクコ、ヨウシュイボタの生植物(苗、切り花、切り枝等)。ただし、種子及び生果実を除く。
プラムポックスウイルスの感染が確認された地域及びその周辺地域を防除区域に指定。
*1:このうち、神奈川県は3年間感染が確認されなかったため根絶