Brothers Quay (Stephen & Timothey Quay)。クエイ兄弟とも。
スティーブン・クエイとティモシー・クエイの双子の兄弟で、人形を使った、ストップモーション・アニメの分野で、カルト的な人気を誇る映像作家。
ブラザーズ・クエイは、1947年、アメリカのフィラデルフィア近郊にあるペンシルバニア州ノリスタウンに生まれた。1965年から1969年にフィラディルフィア芸術大学で学び、69年から72年にロンドンの王立芸術学院で学ぶ。
1978年再びロンドンに戻り、1979年には、短編作品『人工の夜景』を制作している。1980年に、王立芸術学院で知り合った、プロデューサーのキース・グリフィスとともにアトリエ・コーニンクを設立。
1984年、ブラザーズ・クエイは敬愛するヤン・シュヴァンクマイエルへのオマージュに溢れる『ヤン・シュヴァンクマイヤーの部屋』を制作。元々は、英国のテレビ局 Channel 4 が制作したヤン・シュヴァンクマイエルのドキュメンタリーで使われた、番組の間を繋ぐアニメーション映像であったが、後に独立した作品となった。
1986年、二人の最も有名な作品である、『ストリート・オブ・クロコダイル』を発表。1942年にゲシュタポに路上で射殺された、ポーランドの作家・画家ブルーノ・シュルツの連作短編集『肉桂色の店』の中の一篇、『大鰐通り』をモチーフにしたこの作品は、美しく退廃的で幻想的な映像世界が、衝撃を持って迎えられ、ブラザーズ・クエイは映像作家としての名声を確立した。
1995年には、初の長編作品で初の実写作品となった『ベンヤメンタ学院』を発表。
近年の短編作品では、精神病院に入院していた女性が書いた手紙に着想を得た『イン・アブセンティア』(2000年)、「秘宝」コレクションを使った『ファントム・ミュージアム』(2003年)がある。
最新作は、2作目の実写長編で、テリー・ギリアムがプロデュースした、『The Piano Tuner of Earthquakes』(2006年)。
日本では、1987年の『ストリート・オブ・クロコダイル』公開は、話題を呼び、アート・アニメーションとしては異例の動員を得た。90年代には、短編集のビデオも2本発売されたが、その後、日本では作品のDVD化がされず、短編集ビデオ2本も廃盤で、比較的入手が容易な作品は『ベンヤメンタ学院』のVHSビデオのみという寂しい状況が長らく続いていたが、2009年春、相次いで代表作のDVDが発売された。
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- 『人工の夜景』"Nocturna Artificialia" (1979)
- 『レオシュ・ヤナーチェク』"Leoš Janáček: Intimate Excursions" (1983)
- 『ヤン・シュバンクマイヤーの部屋』"The Cabinet of Jan Svankmajer" (1984)
- 『ギルガメッシュ/小さなほうき』"This Unnameable Little Broom" (1985)
- 『ストリート・オブ・クロコダイル』"Street of Crocodiles" (1986)
- 『失われた解剖模型のリハーサル』"Rehearsals for Extinct Anatomies" (1987)
- 『スティル・ナハト』"Stille Nacht I: Dramolet" (1988)
- 『櫛−夢博物館から』"The Comb" (1990)
- 『アナモルフォーシス』"Anamorphosis" (1991)
- 『スティル・ナハト2』"Stille Nacht II: Are We Still Married?" (1992)
- 『スティル・ナハト3−ウィーンの深い森の中』"Stille Nacht III: Tales From Vienna Woods" (1993)
- 『スティル・ナハト4』"Stille Nacht IV: Can't Go Wrong Without You" (1994)
- 『ベンヤメンタ学院』"Institute Benjamenta, or This Dream People Call Human Life" (1995)
- 『イン・アブセンティア』"In Absentia" (2000)
- 『ファントム・ミュージアム』"The Phantom Museum" (2003)
- "The Piano Tuner of Earthquakes" (2006)
DVD
前述のとおり、ブラザーズ・クエイ作品の日本盤DVDはながらく未発売で、海外版を入手するしかない状況だった。以下は英国と米国で発売されているものである。
短編作品で主要なものを、デジタル・リストア収録し、ブラザーズ・クエイ自身によるオーディオ・コメンタリやインタビュー映像等の音声・映像特典も収録された、充実した内容の2枚組DVD。
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- Disc 1 - Films (★はブラザーズ・クエイによるオーディオ・コメンタリーが有る作品)
- The Cabinet of Jan Svankmajer (1984) 『ヤン・シュバンクマイヤーの部屋』
- This Unnameable Little Broom (1985) ★ 『ギルガメッシュ/小さなほうき』
- Street of Crocodiles (1986) ★ 『ストリート・オブ・クロコダイル』
- Rehearsals for Extinct Anatomies (1987) 『失われた解剖模型のリハーサル』
- Stille Nacht I: Dramolet (1988) ★ 『スティル・ナハト』
- The Comb (1990) 『櫛−夢博物館から』
- Anamorphosis (1991)『アナモルフォーシス』
- Stille Nacht II: Are We Still Married? (1992) ★ 『スティル・ナハト2』
- Stille Nacht III: Tales From Vienna Woods (1993) ★ 『スティル・ナハト3−ウィーンの深い森の中』
- Stille Nacht IV: Can't Go Wrong Without You (1994) 『スティル・ナハト4』
- In Absentia (2000) ★ 『イン・アブセンティア』
- The Phantom Museum (2003) 『ファントム・ミュージアム』
- Disc 2 - Footnotes
- BFI Distribution Ident (1991)
- Introduction by the Quay Brothers (2006)
- Nocturna Artificialia (1979) 『人工の夜景』
- The Calligrapher (1991)
- The Summit (1995)
- Rehearsals For Extinct Anatomies (Scope) (1987)
- In Absentia (Scope) (2000)
- The Falls (Excerpt), (1980)
- Archive Interview (2000)