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デモクラシー

(一般)
でもくらしー

democracy(英)

定義

民主制もしくは民主政のこと。元来は古代ギリシア起源の政体分類の一。
文字通り解するならば「人民の人民による人民のための政治」のこと。なお、一般的には「民主主義」と訳されるがこれはあまり的確ではない。

概略

語源

大元はギリシャ語のデモクラティア(democratia)で、これはdemosとkrateinの合成語である。
デモスは民衆とか人民とか訳されるが、本来的には共同体としてのポリスに属する人々のことである*1。クラティアは支配とか統治とか言われるが、要は英単語に直せばrule(もしくはgovernment)のことである*2

略史

古代ギリシャの(つまりはもともとの)デモクラティアは、ポリスを構成する市民たちによる政治のことだった。これは今日の用語でいえば直接民主制に近似する制度であり、一人前の成人市民*3全員の参加によって政治が行われるものだった。この時点ではデモクラシーそれ自体に価値上の優越は見出されておらず、単にいろいろある政体の一種であると見なされていた*4。例えばアリストテレスは権力者の人数に基づき、単一者の支配である王制(君主制)、少数者による貴族制、多数者による民主制、という三分類を考案している。ポリュビオスはさらにこれをすすめ、古代ギリシャ世界(および同時代)の歴史を考察して、有名な政体循環説を唱えている。
この時期の民主制は古代民主制などとも呼ばれ、中世〜ルネサンス期の都市国家的共同体においては古代民主制に類似した共和制が行われることもあったが*5、何にせよフランス革命以降に一般化した近代民主制とは区別される。

さて、ニューイングランドの植民地で起きた反乱は独立革命となり、最終的にアメリカ合衆国という民主制に基づく共和国を出現させる。ここで具現化した人民主権思想は旧世界へとブーメランのように戻り、フランス革命を生み出すこととなった。
これらの近代民主制においては、人間が生来持つとされた諸権利が尊重されるようになるとともに、ナショナリズム(など)に基づく国家統合の理念と、物理的に巨大な国家で実施するための手段としての代議制(間接民主制)が行われることとなった。

訳語について

一般に英単語の翻訳について、「-ism」の語尾を持つ語を「○○主義」とすることが多く*6、「-cracy」や「-archy」の語尾を持つ語は「○○制」とされることが多い*7
実際のところ、英英辞典などでもdemocracyは民主的な諸制度を持つ政府(政体)としての用法が第一義であり、人民主権の理念については第二義以下(場合によっては載っていない)である*8
何にせよ民主主義と訳してしまったことで吉野作造が苦労したのは確かである*9

参照

リスト:リスト::政治学関連

*1:文脈的には「王や貴族でない人々」の含みもあるが、同様に奴隷や外国人も除外している

*2:よって統治でも支配でも構わないとは言える。字義的には統治権は主権の同義語であり、一方支配はそれよりも範囲が広い語なので、語感としては統治の方がやや近いか?

*3:奴隷・女性・子供・外国人などはこの条件を満たさないので、政治からは除外されていた

*4:もちろん貴族主義的な人からすれば、民主主義とは衆愚に基づく政治制度だとして攻撃対象となるが。

*5:マキャベリの理想の政体の模索も、基本的にはポリュビオスが足場である

*6:資本主義、共産主義、無政府主義、国家社会主義など

*7:本当は主義それ自体もprincipleの訳語であり、それを含めてismに正しく対応している語かどうかは別途検討すべき問題ではある

*8:口語的には「democracy」=「民主的な政府を持つべきだとの理念」、との用法はしばしば見られる

*9:有名な「民本主義と民主主義」とかは、「天皇制を否定する危険思想である民主主義とは無関係ですよ」という趣旨の説明もしくは言い訳がかなりの分量を占める。

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