タレース(ターレス、とも。古希: Θαλής、希: Thalēs*1、紀元前624年 - 紀元前546年頃)は、「ソクラテス以前哲学者」の一人にして、西洋哲学史上、古代ギリシアに現れた記録の上では最古の自然哲学者であり、イオニアに発したミレトス学派の学祖である。…「ギリシャ七賢人」の一人とされることもある。
タレス自身が直接書いた著作・記録は残っておらず従って我々は、例えば、ディオゲネス・ラエルティオスによる諸断片から、その哲学的思惟様態を辛うじて、推察乃至は推定しうるのみである。
タレスは多才な人物であったが、特に測量術や天文学に通じており、ヘロドトスによればその知識を用いて日食を予言したといわれている。
「最初の哲学者」たる彼は、万物の根源(アルケー)を「水!」と観ずることを以て、脱神話的な存在解釈という基軸を、西洋哲学史上初めて明確に打ち出し得た、とそのように、史的に整理される。
体育競技を観戦していて、炎熱と渇き、また老齢による衰弱によって死亡した、らしい。
数々の逸話が伝えられているが、その中でも筆者の気を特に惹くものをのみ以下に摘録しておく。
エピソード1;母親が彼にむりやり妻を娶らせようとしたとき、「まだその時ではない」と彼は答えた。その後、盛りを過ぎてから迫ると「もうその時ではない」と答えた。
エピソード2;プラトンが伝えるところによれば、夜空を見上げ天文の観察に夢中になるあまり、溝(あるいは穴)に落ちてしまった、らしい。
日下部吉信『初期ギリシア自然哲学者断片集1』(筑摩書房) ISBN 4480085963
ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシア哲学者列伝(上)』岩波文庫(岩波書店) ISBN 400336631X
*1:以上のように、古代ギリシア語の母音の長短を考慮した表記は冒頭に記した如く、「タレース」である。