海外暮らしの私にとっては、一時帰国のたびに、老人の多さ(そして態度の不遜さ)と、子供や若者の少なさ(そして小さくなっている姿)が目に留まり、悲観的な気持ちになります。(秋元,2022,234) 不遜な老人を嘆ずる作者の所感をまずカントの考えに基づいて検討する。老人には不遜な態度を出すにあたって選択の自由があった、つまり不遜ではない態度も可能だったと想定するなら、作者の嘆じはカント的に正当である。たとえば、人種的偏見が心に浮かんだとしよう。カントはこれを罪としない。浮かび上がりには当人の制御が及ばない面があるからだ。非難されるべきは浮かんだ嫌悪を表に出す営みである。感情を表に出す出さないの裁量は…