今宵もお運びさまで、ありがとうございます。昆林斎胡内にございます。 とある劇団の稽古場で起きました、ちょいとした事件のお噂。公演日迫りまして、稽古もいよいよ熱を帯びようかというとき、なにやらわけあり気な六人が闖入してまいりました。訊けば彼らは「役」と名乗り、自分らが織りなす芝居を持参してきたと申します。それを書きあげてくれる作者を、探しにまいったそうで。 正気とも思えぬこの者たちを、演出家は追出そうといたしましたが、無理やり始まってしまった「役」同士の口論に巻込まれて、事情の一端を耳にいたしますうちに、ふと閃きました。ピランデッロの台本なんぞより、この連中の実話を上演したほうが、興行的に当るの…