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その“しつけ”が終わると、父は必ず、 「このことは絶対に誰にも言うなよ」 と濁った目を真尋にぎょろりと向けながら言った。 真尋はただ黙って頷くことしかできなかった。 他に何ができただろうか。6歳の幼い真尋は、その無慈悲な現実の前に立ち向かう術を何一つ持っていなかった。できるのはただ、その現実からひたすら目を逸らして、そしてその現実が真尋の目の前から通り過ぎてくれるのを待つことだけだった。 だけど、…
「降りてこないのよ、情報が。こればっかりは上も口が堅くて」 「要するに」 「ええ、そういうことよ」 沈黙。 「歌って」 「僕がですか?」 「歌は嫌い?音痴だったりして」 「嫌いでもないですし、音痴でもない。音楽の成績はこれでもよかった」 「まだ授業で一斉に歌わせてるのかしら、おかしいと思って昔は言い出せなかったな」 「リズムの取り方や音程の調節を習った試しありませんでした。大きな声で元気よく歌えば…
前話はこちら。 第四章 彼女が望む理由 珍しく向こうから連絡を寄越したのは、帰省が終わってすぐのことだった。その内容は簡潔で「部屋の片付けをするから今週は来るな」ということらしい。今更部屋が片付いていないことを気にするような奴じゃないはずだが。ひとまず疑問に思いつつも承諾した。ーーーもしかして好きな奴でも出来たんだろうか?なんて馬鹿馬鹿しい考えも一瞬頭を過るが、すぐさま打ち消された。あの姉と恋愛沙…
小説を書く時間って、皆さんいつなんでしょう。 朝書く人もいるでしょうし、睡眠時間を削って書いている人もいるでしょう。週末に鬼のようになって書いている人もいるでしょう。 まあ、それはその人が一番書きやすい方法で書けばいいと思います。 僕は仕事もあるので、書くのは朝方、だいたい五時から七時くらいまでが多いです。夜は一日の疲れもあるし、早く酒を飲みたいので、ほとんど書いたことがないです。 土日も意外とお…
(これまでのあらすじ) 月の巫女である竹姫と、その乳兄弟である羽磋。月の巫女としてではなく、素の自分の居場所が欲しいと頑張る竹姫に、羽磋は「輝夜」(かぐや)の名を贈り、自分が輝夜を望むところに連れて行くと約束します。それは二人だけの秘密でした。しかし、大砂嵐から身を守るために月の巫女の力を使った竹姫(輝夜姫)は、その大事な秘密を忘れてしまいます。月の巫女はその力を使った代償として自らの記憶・経験を…
Blue あなたとわたしの本 255 映画「PERFECT DAYS」をもう観られただろうか。あなたがどういった感想を抱くのか、とても興味がある。もしまだ観られていなかったら──ネタバレもこれから書いていくので──鑑賞後にこの文章を読んでもらってもいいのかもしれない。 真っ白な状態で映画を観てみたいとお考えなら。 役所広司演じる平山さんの最後のあのシーン。 車中、正面からの大写し。その変化する表情…
ひとのいいカモはそのとおりにしてくれました。ふたりがしゅびよく川をわたり、またしばらくあるいていきますと、だんだんと森のようすにみおぼえがあるようになりました。 そしてとうとう、遠くのほうに、おとうさんの家がみえました。ふたりは、彼らを捨てたおとうさんをみつけ駆け出しました。 「おとうさん、やっと帰って来られたよ」 ヘンゼルは満面の笑みで、親しみをこめて話しかけました。グレーテルは泣きながらおとう…
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桜 今週のお題「小さい春みつけた」 「小さい春」というより、すでに春になっていた。 毎年のように、春を感じるのはたやすい。まず、目と鼻に来る。 花粉である。 今年の私の症状は、主に目に来ている。 小さい小さい春(花粉)をいやでも見つけてしまうのである。 花粉が飛散する時期になるとかゆくなる。この春はかゆみが高じて、目が腫れているような感じになった。 二月の半ばから末くらいからその症状が始まって、今…
LOVE LETTER 朝ランを終え、シャワーを浴び、お弁当づくり。 朝食と出勤の準備を済ませましたが、家を出るには、まだ少し早いのです。 ベランダに出て、煙草に火をつけました。(はい。笑ってやってください。失敗しました…禁煙) 向かいのマンションから、出勤する夫と ゴミ出しがてら それを見送る妻が現れます。 40代後半… いや、50代かもしれません。 3階のベランダからは、薄くなった夫の頭頂部が…
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