TVピープル TVを信仰する人々のこと。知能の証でもある選択という行為を放棄した人々。TVを観覧していないときのTVピープルは一般人との見分けが付きにくいが、TV閲覧中は例外なくぽかんと口が開いているので容易に見分けが付く。開いた口は閲覧終了まで閉じることはない。人間の言葉も基本的には理解するようだが、TVの話しかしない。
村上春樹著 短篇集 短編小説
TVピープル (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon 村上春樹を順番に読んでいこうシリーズ 11 やっぱり短編集は面白い。 TVピープル 不思議な存在が現れる。 飛行機 独り言、気になるな。 我等の時代のフォークロア 時代性を感じる話。女性の立場から、わかるかも。 加納クレタ ホラーだね。 ゾンビ こちらもループ系ホラー 眠り これは、夢おちかな。 どれもテイストが違っていて楽しめた!自分の中をちょっと変えて見てみたい時いいかな。 自分の中で結末に納得がいくかどうか、そこで面白いかどうかを問うのが本筋だとは思うけど、村上春樹の小説は、表現の仕方と独特の登場人物像が自分の中にない世…
短編集「TVピープル」より、『飛行機ーーあるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったか』を考察します。 私は短編集の表題作となっている「TVピープル」については、「我々はテレビを通して、構造主義的に社会に取り込まれ、自分が思っているほど自由に考え行動できない」と考察しました。 今回、短編「飛行機(Aeroplane)」では、飛行機を (Aero)plane=平面、水準、平坦 と読んでいます。 本短編は三人称で、登場人物の彼(20歳)と彼女(27歳、既婚者で子供もいる)の不倫関係にある二人が、彼が時々口にする「独り言」について語るお話です。 Aeroplane: Or, How He …
「TVピープル」は、タイトル通りTVピープルという不思議な小人が登場する村上春樹の短編小説だ。世にも奇妙な物語にありそうなストーリーだなと思う。短編集『TVピープル』の表題作でもあるので、村上春樹の短編の中でも有名ではなかろうか。 『ノルウェイの森』・『ダンス・ダンス・ダンス』執筆後のスランプ後に書かれた短編小説が「TVピープル」であった。村上春樹自身も、それが復帰の瞬間だったと語っている。 どこかマジックリアリズムぽさがある「TVピープル」だが、人間関係の希薄さや疎外感がテーマになっているように思う。村上春樹作品の主人公は周囲から距離を置く傾向があるが、「TVピープル」ではかなりその傾向が強…
村上春樹著『TVピープル』を考察します。本作は短編集「TVピープル」の表題作となっていて、短編集の持っている全体的なムードを示す作品となっています。小説『1Q84』に登場した「リトルピープル」へと続く邪悪な系譜なのですが、こちらを「邪悪」としてしまうのは注意が必要です。と言うのも、どのような物事であっても、不都合や不条理を作り出し、呼び寄せているのは、他の誰でもない我々だからです。 TVピープル (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon
1、作品の概要 1990年に刊行された村上春樹の短編集。 『TVピープル』(par AVION1989年6月号掲載)、『飛行機ーあるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったかー』(ユリイカ臨時増刊号1989年6月号掲載)、『我らの時代のフォークロアー高度資本主義前史』(SWITCH1989年6月号掲載)、『加納クレタ』(書き下ろし)、『ゾンビ』(書き下ろし)、『眠り』(文學界1989年11月号掲載)の6編からなる。 1990年アメリカ『ザ・ニューヨーカー』に『TVピープル』が掲載された。 2、あらすじ ①TVピープル ある日曜日の夕方にTVピープルたちが僕の部屋にやってきて、TVを置…
さて、テレワークの合間にリビングを覗くと、ソファーに寝そべって午後のワイドショーを楽しんでいる妻の後ろ姿。結婚して16年。専業主婦の妻はたまに訳の分からないイライラをまき散らす以外は特段悩みもない様子で・・・ん?訳の分からないイライラ⁉ いやいや取り越し苦労はやめましょう。居眠りを始めた彼女の寝息を聞きながら私は不安を吹き払います(^^;)。というわけで本作のご紹介を始めます。 《あらすじ》 夜中に目を覚ますと黒い服を着て痩せた老人が私を凝視していた。大きく放った《無音の悲鳴》が細胞の隅々にまでしみとおり、以来私は一睡もしていない。拡大する意識の誘惑にのめり込む一方で、義務として買い物をし、料…
子供の頃に見た映画『ゾンビ』。生前の記憶と理性を失った死者たちの蘇った姿は醜く、動きはぎこちなく、哀れなモンスターそのものです。現代の感覚でその映画を振り返ると、死者を冒涜する描き方は少しやり過ぎな感じもしますが、醜く哀れなものの筆頭のイメージとしての『ゾンビ』の姿が、今でも私の記憶に焼き付いています。 《あらすじ》 真夜中、墓場のとなりの道を男女のカップルが歩いていた。邪悪なことが起こりそうな予感が漂う。ゾンビの気配。だが何も見えない。その代わりに男がこんなことを口にした「どうして君はそんなみっともない歩き方をするんだろうな」 【邪悪な予感】 「どうして君はそんなみっともない歩き方をするんだ…
本作に登場する加納マルタとクレタ姉妹から私が連想するのは、当時も今も美人ユニットの叶姉妹です。お二人がTVで活躍されている姿を拝見するたびに、私はこの作品を思い出します。 《あらすじ》 私の名前は加納クレタ。姉のマルタの仕事を手伝って暮らしている。私はある問題を抱えていた。男たちは私を見るとみんなきまって襲ってくるのだ。でも一度だけ、私を犯そうとした相手を殺したことがある。その男は警官で、物音を聞きつけたマルタは大きなバールで男の頭の後ろを思い切り打つと、喉を切り裂き、逆さに吊るして血を抜いた。 『警官殺し』 そして私たちは喉を裂いた警官を裏庭に埋めた。ピストルも手錠も紙挟みもブーツもみんな埋…
本作は、終焉したはずの恋愛が、時を経て成熟した二人の前に現れ、再び離別が繰り返される、という哀しくも静謐な情景を描いた作品です。全体的な構成としてはフィッツジェラルドの名作『冬の夢』*1の影が感じられます。 《あらすじ》 高校時代の同級生に、成績が良くて、運動ができて、親切で、いつもクラス委員をしていた男がいた。彼には校内でも指折りの美人のガールフレンドがいて、二人はお似合いのクリーン・カップル。僕はイタリアの町で偶然この男と再会した。そこで彼は当時の打ち明け話をし始めた。これは我が1960年代のフォークロア(民間伝承)である。 『貞淑な彼女の約束』 彼女は唇を結んで、小さく首を振った。「あな…
本作は初期の短篇『バート・バカラックはお好き?』の続編のような趣の作品です。先にご紹介したときは小説における《テーマ主義の問題》について取り上げましたが、今回もそれに関連する内容となります。このような読み方に興ざめしていまう方もいるかもしれませんが、「こんな小説の読み方をする人もいるんだ」ぐらいの軽い気持ちでお付き合いくだされば幸いです。 《あらすじ》 彼は二十歳、女は彼より七つ歳上で結婚していて子供までいる。彼女の夫は旅行会社に勤めていて月の半分近くは家を留守にしていた。五月の昼下がり、いつものように二人は交わった。シャワーを浴びて浴室から戻ってきた彼に女は訊ねる。「ねえ、あなた昔からひとり…
・みみずくは黄昏に飛びたつ 著者:村上春樹、川上未映子 出版:新潮文庫(Kindle版) 「騎士団長殺し」を再読(再<聴>)して、 「そういえば村上さんに川上さんがインタビューした本で何か言ってなかったっけ」 と思いついて、購入していたKindle版をチェック。 「何か言ってた」 どころか、本書は「騎士団長殺し」を巡ってのインタビューでしたw。 (文庫用の新録も含めてインタビューは5回。正確にはその1回目は「職業としての小説家」についてで、残りが「騎士団長殺し」についてとなります) もっとも川上さんが、 「これはどういうことなのか」 と結構突っ込むのに対して、村上さんは 「あんまり考えてない」…
TVピープル (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon 1989年に発表された6つの短編集。 印象深かったのは、「我らの時代のフォークロアー高度資本主義前史」。 処女を捨てるかどうか。 こういう内容が多いので、村上春樹が受験の問題に取り上げられることが少ないわけだ。もしノーベル文学賞を受賞したら、どの作品は、○○歳以上が読むべきというようなガイドラインが制定されるのだろう。知らない方が、無知無学なのである。 自分の学生時代を顧みて、この話しのように面白く書けるのは、きっとSくんしかいない。今、どうしてるんだろう?
2023年5月某日 「意思決定の手順」がナゾすぎる件を思い出した日 職場での「マスク着用」の扱いが、「業務命令」ではなく「個人の判断」となったので。マスクをつけずに働いてみる。これが、まあ、なんというか。うれし恥ずかしい、というか。やっぱりちょっと、落ち着かない、のである。 よく、ニュースで中学生が「マスク外していいって言われても、恥ずかしいし外したくない」みたいに答えるのを見て。「おいおい、空気読んで期待に応えた回答してんじゃねーよ」とか思ってたんだけど。あろうことか、僕もやっぱり、恥ずかしかったです。思春期気分長すぎかよ。 この3年間、「後から振り返った時に資料的な意味が出るんじゃないか」…
自分が世界と均一なとき/世界を見失っており立てないとき/自分が世界に没入し てるとき/ 没入してるときは大抵雨が降っている。とけ込んでいると意識のみになって体がカ ンモクになる。 10年前に、いわゆる読書体験だった『ねじまき鳥クロニクル』の一章を再び読ん だ。(没入した分だけ返して?くれる長編小説かとおもう。村上さんの長編の中で 一番影響あった。いっても他の長編はカフカとノルウェーのしか読んでないが。短 編集だと『TVピープル』が好き) 10年前に読んだとき、初めて読んだのに既に知っているという感覚があった。と いうか文章と自分の体が呼応しているみたいな。いったん文章を読んでそのあと現 実にそ…
母親のことを書く。といってもたいしたことではない。偏頭痛もちであんぱんが好きだったというだけの話だ。 母親は偏頭痛もちで、雨が降りそうになると頭が痛いと言い、雨が降るとスッと頭痛も引くのだと言っていた。曰く「私の頭は天気予報よりも正確だ」と。今思えば、気圧の変化に敏感だったということなのだろうけど、幼い私はよくわかっていなかった。幼心に大変そうだなと思うだけだった。 母は五人姉妹の3番目として、長崎県の離島に生まれ離島で育った。母が幼かったころは、飼っていた馬に乗って畑に手伝いに行っていたと聞いたことがあるが、今の私の感覚からすると信じられない。あんぱんがひとつ10円だっった頃の話だ。母はおば…
2023年4月某日 学校のプリントに狼狽した件 新年度になって、子どもが持ち帰ってきた「小学校のきまり」的なプリント。登校時間とか、休みの連絡方法とかを列挙する中に、「心を込めて掃除します」みたいなことが「きまり」の1つとして書いてあって、好きじゃなかった。心を込めたかどうか、他人からは分からないじゃないですか。「毎日掃除します」とかでよくないか、と。 「校庭で元気よく遊びます」もあった。これも、「元気よく」は省いていいと思う。ルールを記述する時に、「説教をちょい足し」してくる現象、興味深い(というか警戒してる)。 「心を込めて掃除」も「元気よく遊ぶ」も、「自分で考えた目標、心がけ」なら内面を…