2014年1月号掲載 毎日新聞郡山通信部長/藤原章生(当時) 福島県の郡山市に暮らし始めて8カ月が過ぎた。自分の中のもう一人がいつも耳元でこうささやく。「まだ大した仕事、してないな」「早く特ダネ書けよ」と。新聞記者なら誰もが抱く、いくら書いても収まることのない焦りだ。 一方でもう一人がこう慰める。「いや、それなりにやっている。焦ることはない。書くべきことがあれば一気に書けばいい」 特派員時代も同じだった。1年目はひたすら焦り、新たな言語を、その土地、国の核をつかもうと躍起になり、2年目あたりから土着の者として物事をとらえられるようになる。そしていつの間にか、落ち着きのなさ、焦りは消えている。 …