わがくに陸軍の「通史もの」を繙くと、まず結構な確率で高島秋帆の名前が出てくる。 勝海舟の『陸軍歴史』にしてからが既に然りだ。「天保十一年庚子高島四郎太夫ノ建議ハ暗ニ後年我邦陸軍改制ノ事ヲ胚胎スル」と、劈頭一番、序文にもう含まれている。どれほどの重要人物か、おのずと察しがつくだろう。 (Wikipediaより、勝海舟) 秋帆、通称は四郎太夫、本名茂敦。寛政十年八月十五日、長崎の街にて生を享く。その身に流れる血液は、代々長崎の町年寄を務め、萩尾新流の砲術を伝える、由緒正しきモノだった。 年齢を重ねるに従って、順当に一族の流れを汲み、火砲の扱いを学んだらしい。 が、高島秋帆、天性カンのするどい男であ…