第1 序論 訴訟手続における「釈明」とは、「事実関係や法律関係を明確にさせるために、裁判所から当事者に対してされた質問に答えてする当事者の陳述」をいう(有斐閣・法律用語辞典*1)。したがって、「釈明」の主体は、質問に回答する「当事者」であり、裁判官がする質問のことは、「求釈明」と称するのが本来である(裁判所職員総合研修所・民事訴訟法講義案*2)。しかし、実務上、当事者の行動を「釈明」というと同時に、裁判長の行動をも「釈明」という*3。この紛らわしい慣用の存在は、昭和3年12月の司法研究報告書に掲載された論文(民事訴訟に於ける証拠に就て*4)が夙に指摘することである*5。それによれば、大審院判例…