香子(三) 帚木蓬生 PHP研究所 図書館本 香子(二)に続けて、500頁にまた一週間かかった。 香子(紫式部)の物語は、中宮彰子への御進講を依頼され、彰子が皇子を出産して道長が権勢を振るい始めるころまでが描かれている。紫式部日記の内容も盛り込まれているのだろう、内裏での華やかな儀式や催しの描写が詳しい。『源氏物語』は「乙女」から「上若菜」までを扱っている。光源氏の六条院が完成し、太上天皇に準ずる位にまで上り詰める様子は、香子の現実と呼応している。読んでいるうちに、どちらの物語なのか一瞬分からなくなることがある。香子の現実と香子の紡ぐ物語が溶け合ってしまうのだ。 ついうっかり現代的な視線で『源…