前頭側頭自閉軒全集抄⑩弓教え 弓教え(『旭山玉繭洞妖怪図語彙』より) 武州に美女木てふ所あり。鎌倉の右大将、奥州を攻め玉ひし時、ここに屯し玉ひけり。夢に八幡大菩薩の立ち玉ひて、御告し玉ひけるとかや。のち鶴岡八幡、領家なりしとき、飛射騎とて流鏑馬しけるとか云ふぞ。ここに一つの霊ありて、木に登りて流鏑馬を見たりしが、東下りせし官女のために横領せられて信濃国へと逐電しぬ。已後は土民に弓を教へて暮らしぬ。美女には憎みて教へざるとか云ふぞ。この事、林大学頭の一書に見えたり。[1] 「弓教え」という妖怪がいる。その名の通り、人に弓を教える霊である。『旭山玉繭洞妖怪図彙』によると、文治五年(1189)、奥州…