「ここのところ急に寒いから急いで形にしてしまおう」 などと思いながらせっせと毛糸を編んでいると、なんとなく尾崎翠の『第七官界彷徨』が読みたくなる。 好きな色や感触の素材を選んで「ありうべき形」を思い浮かべながら一人でちょっとずつ積み重ねていればいつかは何かしらのものが完成する、その感覚が非常に『第七官界彷徨』っぽいような気がするのだ。 チマチマ。チマチマ。 家がひとつの生命体であって、自分はその中の細胞であるようだ。 だから自分の喜怒哀楽は、全体の生命活動の一部であることによってちょっとばかり免責されている。 「たしかKindleでも買ってあったと思うけど」と思って検索したら、知らない間にコミ…