1957年、東京都生まれ。美術研究者、比較文化学者。父は平安文学研究者の稲賀敬二。 東京大学大学院比較文学比較文化専攻博士課程単位取得退学。パリ第7大学博士課程修了。 三重大学人文学部助教授を経て、国際日本文化研究センター教授。 『絵画の黄昏 ―― エドゥアール・マネ没後の闘争』にてサントリー学芸賞受賞、『絵画の東方』で和辻哲郎文化賞受賞。ほかに編著『異文化理解の倫理のために』(いずれも名古屋大学出版会)。
1994年に愛知県美術館(宮城県美術館、世田谷美術館)で開催されたクプカ展の図録 「ABSTRACTION抽象絵画の覚醒と展開」展 - logical cypher scape2と「パリポンピドゥセンター キュビスム展 美の革命」 - logical cypher scape2とでクプカの作品を見て、興味を覚えたため、94年の展覧会の図録を見てみることにした。 紛れもなく抽象絵画の創始者の一人であるにも関わらず、カンディンスキーやモンドリアン、マレーヴィチと比較しても知名度が一段劣る画家だろう*1。 もちろん、94年に日本でもこうして単独の展覧会が開かれており、美術史の本もちゃんと読めば名前が…
「銀河鉄道の父」という映画(2022)を観た。原作は門井慶喜の同名の直木賞受賞作で、宮澤賢治の生涯を父政次郎の視点から描いたもので、私は政次郎が死ぬまでが書いてあるのかと思っていたから、原作には不満が残ったが、映画は良かった。特に妹のトシを演じた森七菜が、美人でない分リアリティがあってよかった。 ところで宮澤賢治といえば、長いこと私は批判的、ないしバカにしてきた。もちろん、吉田司の『宮澤賢治殺人事件』(1997)と、荒川洋治の『坑夫トッチルは電気を灯けた」(1994)の影響で、前者は『批評空間』で柄谷行人が吉田を呼んでさんざん賢治をバカにしていたから影響も受けたし、あとで『現代文学論争』にも書…
一条真也です。『神智学とアジア』吉永進一/岡本佳子/莊千慧編著(青弓社)を読みました。「西からきた〈東洋〉」というサブタイトルがついています。カバー表紙には、「オカルティズムからニューエイジ、現代のスピリチュアリティへと続く霊的な思想の要所にあり、アジアの宗教にも影響を与え、東西にまたがる活動をおこなった神智学運動。その越境性と分野横断的な営為、人的な交流を、近代の帝国主義やメディアの発達なども踏まえて多角的に検証する」と書かれています。 神智学は、宗教だけでなく、19世紀末から20世紀の政治や社会などにさまざまな影響を及ぼしました。欧米で誕生した神智学は、どのようにアジアに広まり、受容され、…