小倉金之助が数学教育の意義として、この「科学的精神の開発」を主張した。
そして、科学的精神の開発において、その核心となるのは「函数観念の養成」であるとした。
さて人間生活において科学から学ばねばならぬものがいろいろある。生物学上の事実、理化学の現象、天文学地震学等の事柄、これらに附帯せる観察の方法、その他にもなお重要なものが多いことであろう。けれどもその最も根本的なことは、科学的見方、科学的考え方、科学的精神を学ぶところにあると信ずる。
さきに述べたごとく、ここに二つまたは多くの現象あるとき、経験的事実を基礎としてその原因を穿鑿し、それらの現象の間に因果の関係ありや否やを求め、もし関係ありやとせばいかように関係ありや、その間の方法を発見せんとする努力、精神、これがすなわち科学的精神である。
出典:小倉金之助(1973)『数学教育の根本問題 小倉金之助著作集第4巻』,勁草書房,p.111
現在の数学教育の用語でいえば、「数学的な考え方」と重なる部分が多いだろう。この科学的精神の開発は、現在、数学的モデリングにおいて具現化されている。