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異常プリオン

(サイエンス)
いじょうぷりおん

人間や牛など動物の体内にあるたんぱく質「プリオン」の構造が変化してできる。
正常なプリオンを次々と異常型に組み替えて脳などに蓄積し、神経細胞を破壊して牛のBSEなどの「プリオン病」を引き起こす。

 
…と、新聞やメディアなどで説明されることが多いが、実は「異常プリオン」という言葉は科学的には存在しない。
 
なぜなら、「プリオン」という言葉自体が「感染性蛋白質粒子」という意味だからである。
言葉のレベルとしては「ウイルス」や、「細菌」と同じである。
感染性のあるウイルスを「異常ウイルス」とは言わないように、プリオンを「異常プリオン」と呼ぶことは間違っている。
 
ではなぜこのような間違った言葉が一般に浸透しているのかと言うと、プリオンの構成要素が「異常型プリオン蛋白質」であると考えられているからである。
 
我々の細胞には、「正常型プリオン蛋白質」が発現しており、何らかの生理的な作用を持っている。
プリオンに感染すると、この正常型プリオン蛋白質が異常型プリオン蛋白質に構造転換し、そして重合しプリオンになると考えられている。
 
つまり、異常型プリオン蛋白質一分子の感染性は確認されていない。
異常型プリオン蛋白質が凝集、重合して感染性が獲得されたら「プリオン」と呼ぶ。
そのため、感染因子としては「プリオン」という言葉を用いる。
 
また、異常型プリオン蛋白質は蛋白質分解酵素に高い抵抗性を持つ。
そして、プリオン病に罹患した個体の脳からは、蛋白質分解酵素に抵抗性の異常型プリオン蛋白質が検出される。そのため、異常型プリオン蛋白質が疾病の原因と考えられるが、異常型プリオン蛋白質はあくまで結果として検出されているだけで、完全に原因とは証明されていない。
 
「異常」という言葉が独り歩きし、また感染メカニズムに関して正確な理解がされていないためこの存在しないはずの単語が定着しつつある、というのが現状である。
 
 

蛇足

 
なお、プリオン研究者でもこの言葉を用いる人がたまにおり、そのような人の話は本物の専門家は話半分で聞いてしまう(かもしれない)。
エセ研究者を見つける試金石になっているという意味では価値のある言葉かもしれない。

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