その図書館は、駅前の目抜通りと垂直に交わる長い一本道の先にあった。郊外の住宅街特有の、人通りが少ないにも関わらず無駄に幅の広く取られた道路の、両側には古い一軒家の塀が灰色の壁のようにどこまでも連なっている。人がいない。果てしなくみえるこの一本道に入ってから、私はまだ誰一人ともすれ違っていない。顔を上げると、正面の遥か遠くに黒々した山並みが横たわっている。いくら歩いても山並みは依然遠くにあって一向に進んでいる気がしないので、私はスマホの画面を点けっぱなしにして、Googleマップを何度も確認しながら歩いた。昼間に来て良かったと思った。知らない土地の誰もいない一本道など、夜中に迷い込んだら最後、発…