2002年6月18日、梅雨どきのやや蒸し暑い日に、私は小田急線向ヶ丘遊園で降りて、S大学のキャンパスへ行くバスに乗った。専任教員としての採用を前提とした面接に行くためである。 この話は同大学日本文学科の板坂則子教授からもたらされたもので、私はその前に吉祥寺のルノワールで、板坂氏と、中国文学専攻の女性と、あと年配の男性の三人の教授と面談していた。 だが私は専門は比較文学であり、板坂氏は近世文学の枠で私を採ろうとしていたので、反対意見もあったらしく、二人を面接することになり、VDという西洋人女性をダミーとして呼ぶことになった。VD氏は別の大学の専任だった。 しかし面接前に、私を支持する側だった教授…