江戸時代の軍学書。武田信玄・武田勝頼期を中心に甲斐国武田家の事跡や軍学・作法などについて記されている。甲州流軍学の聖典。本編20巻、末書2巻。
原本は長篠の戦いの後に記された武田家臣高坂昌信(春日虎綱)の口述記録といわれ、同じく武田家臣で甲州流軍学を創始した小幡景憲が原本を入手し、元和年間には出版されている。江戸時代には注釈書を含め広く一般に読まれ、文芸や浮世絵などへの影響も強い。また、武田家の伝説的軍師である山本勘助の活躍なども記されている。
内容は確実な文書や記録史料と概ね重なるものの、確認されない合戦や年紀・人名の誤りなどを多く含み、実証主義的な近代歴史学においてはその価値を否定された。近年は国語学者の酒井憲二により言語的特徴から成立期が早い可能性が指摘され、研究においても二次的に利用されているが、歴史資料としては賛否両論が存在する。